『自分』と『他者』を分けるもの
アダルトチルドレンな私たちは、人との距離のとり方がとても不器用です。なぜなら、自分と他者を分ける境界線をきちんと持っていないから。それでは誰彼なく領域に踏み込まれてしまいます。心の中に無遠慮に入り込まれて傷つき、余計に人が怖くなるから、今度は必要以上に他者を警戒し距離を取るようになります。それは相手から見れば『よそよそしさ』に見えるかもしれませんね。
よそよそしさを漂わせていると、人はなかなかあなたに近づけなくなります。だって、近づいたらビクッとされそうですものね。どんな人も本当は拒絶されるのは怖いんです。だから、「(自分が傷つかないように)あの人には近づかないことにしよう…」と思われてしまうのです。
そしてあなたは、ためらっている相手を見てこう思います。「ほら、やっぱり私は人に受け入れてもらえないんだ…」と。それでもあなたを怖がらせないで、近づいてきてくれる人もいます。何かのきっかけで親しくなれる場合もあるでしょう。そんなとき、あなたはガードを全部取っ払ってしまいます。「この人は味方なんだ!」と嬉しくなって、相手を『出入り自由』にしてしまうわけです。
でも、気をつけなければならないことがあります。相手が健全な境界線を持っている人であれば、あなたがいくらオープンであっても「入っていいですか?」と、配慮してくれます。勝手に上がり込むようなことはしません。しかし、相手もあなた同様境界線のない人だった場合、どこまで入ってもいいのか、今のあなたがどういう状態か、そういうことがわかりません。だから自分とあなたを混同してしまいます。
そういう人は、相手に対して「私だったらこうする」「あなたはこうするべきだ」というようなアドバイスをバンバンしてきます。本当はただ気持ちを聞いてもらいたかっただけなのに、こんなふうにあれこれ指図されて傷ついたことがあるでしょう? その人にも悪気はないのですが、残念ながら健全な境界線がないからこそ、このようなことが起こってしまうのです。そう、親子の間であったとしても。
親子間でも必要な『領域』という概念
親は、『子どもは独立した一個人である』ということを見失いがちです。そして、子どももそのような環境で育つと、親と自分の境界線をきちんと作ることができません。そのような親は、子どもが侵入を拒否すると傷ついてしまうからです。親を傷つけたくない子どもは、親の侵入を拒めません。
親は親で「私は心配してあげているのに!」と、思っています。子どもを心配するのが親の仕事であり、愛だと思っているからです。でも『心配』は『愛』ではありません。『心配』は親が勝手に想像した、我が子にとって最悪の未来予想です。それはその子の真実ではありませんし、まして未来は明日のことですらわからないのです。
しかし自分の想像をすでに決まった事実のように信じこみ、震え上がった親は、「この子をなんとか守らなくちゃ!」と思います。そして子どもの領域に入り込み、「あなたはこうするべきだ(でなければ私の予言が本当になってしまう!)」と、あなたを変えようとします。「もっと強くなくてはダメだ」「もっと賢くなくてはダメだ」「もっと明るくなければダメだ」「もっと積極的でなければ…」そうすれば、この恐ろしい未来を回避することが出来るはずだ!そう信じて。
子どもは親を愛しているからこそ、この「愛の名のもとに」親が侵入してくるのを拒めません。そして「私がダメなんだ。変わらなくちゃダメなんだ…」と、自分自身を否定するしかなくなるのです。悲しいことに、このようなことがあらゆる親子関係の中で起こっています。それはひとえに、こういう大事なこと(心のカラクリ)を、きちんと学ぶ機会がないからです。ここで私たちは、『親は全知全能の神ではなく、怖がりなひとりの人間なのだ』という認識を持つ必要があります。彼らが怖がりなのは、『事実』と『想像』を別のものとして見る力がないからです。
それでは、相手を傷つけずに自分の領域を尊重してもらう、コミュニケーションの取り方を伝授しましょう。それは「こうしてくれると、私はうれしい」と伝えることです。
たとえば、「お母さんが私のことを本当に心配してくれているのはわかってるよ。ありがとう」←ここで親の気持ちをしっかりホールドしましょう。親は自分の愛を受け止めてもらえたことで、安心します。それから「でも、これは私が自分で決めたいの」あるいは「私は失敗してもいいからやってみたいの」と伝えます。『これは私の領域です!』という宣言です。そして「だから今は黙って見守ってくれるとうれしい」と伝えましょう。
ソフトでありながら、「私は大丈夫」というあなたの心の強さが伝わって、ご両親はいつの間にか我が子がたくましく成長していることに気づくことでしょう! 「この子を守らなければ!と思い込んでいたけれど、こんな強さがあったんだ。もう大人に成長しているんだ」と、目からウロコが落ちるかもしれませんね(笑)。
そして親子でありながら、お互い境界線を持った大人として、対等な関係を築いていくことが可能になります。だけどね、困ったときにはお父さん、お母さんに助けを求めるのは、もちろんOKですよ^^
親は我が子を助けたくてしょうがない生き物ですからね♪